現代ではさまざまな技術が進歩しており、工場についてもいろいろな面で発展が遂げられています。デザインなど外面的な部分も含め、環境に配慮した汚染対策などについても発展しています。コンクリート製の煙突についても、現在の形に至るまでにさまざまな進歩がありました。現在、当たり前のように煙突工事が行われていますが、そこに至るまでには、多くの試行錯誤がありました。

コンクリート製の超高煙突工事の発展については、スリップフォーム工法についての説明を外すわけにはいかないでしょう。スリップフォーム工法は、そもそもヨーロッパやアメリカなどで取り入れられている工法でした。スリップフォーム工法は、作業能率を工場させるために、連続的に型枠を上昇させるものです。そして、これにコンクリートを連続的に打設していきます。この工法によって、工期の短縮を図ることができるほか、大規模の設備であれば経済性の期待もできます。また、作業が単純化するため、比較的簡単に作業を進めることも可能です。打継目も少なく、コンクリートの品質管理にも役立つので、構造物の強度の信頼性も増します。さらに、作業台の上で作業をするため、高所でも安全な作業を行うことができるというメリットもあります。スリップフォーム工法を取り入れることによって、超高設備の建設を経済的に、そして信頼をもって行うことができることが判明し、日本でも採用されるようになりました。ところが、日本では、コンクリート製については、鋼製に比べて超高設備の発展が追いついていませんでした。

日本の産業発展に伴い、超高設備の需要は高まっていき、重化学工業地帯においては鋼製の三脚型もしくは鉄塔型の設備がたくさん建てられていました。高さは150~200メートル級の非常に高いものです。鋼製に対し、コンクリート製の発展も遂げるために注目されたのは、環境に対する配慮です。かつては、煙突は煙を排出し、台風や地震などといった自然災害に耐えうるものであれば良いと考えられているところがありました。環境に配慮するという点では欠けている部分があり、また、工場全体のひとつの設備だという認識もあまりなかったのかもしれません。その工場の仕組みの一部として考え、環境汚染対策を新設工事の時点で行っていかなければならないということが、考えられるようになりました。そして、新設の設計・計画段階で、さまざまな技術について考えられました。

基礎技術としてはまず、大気汚染対策に関することです。拡散や気象条件、燃料、発生施設などについて検討されました。通期計画については、通気力や拡散について考えらました。構造設計についても、耐震設計やライニング設計などについて検討され、施工については型枠やコンクリートについて検討されました。応用技術としては、高温ガス対策や材料の検討、設計方法などについて考えられました。最適設計法、耐震設計法と基礎構造、施工法やボイラー関係など、挙げていけば非常に多くの研究開発が行われました。これらの研究開発を総合的に組み合わせ、環境に配慮した設備が作られるようになったのです。構造物としての技術だけでなく、設備の機能を発揮するための技術も集積されました。ただ排気ガスを排出し、自然災害に耐えうることができればよい、というものではなくなったのです。

環境問題が注目されるようになってからというもの、環境への取り組みはどんどん発展しています。煙害問題については、明治時代の産業革命期までさかのぼります。当時の銅山の製錬所から排出された亜硫酸ガスは、周辺地域の農作物に被害を及ぼしました。このとき煙害対策としてとられたのは、まず、製錬所を農村から離れた海辺に移すことでした。ところが、煙は風に乗り、各地に汚染物質を飛ばすことになり、結局さまざまなところに被害を及ぼしました。それからも、亜硫酸ガスの排出抑制のため、原料中の硫黄分を減らすための努力が行われました。新設の煙突工事を行うときには、亜硫酸ガスの排出を減らす工夫ができないかと考えられるようにもなりました。昭和時代に入り、亜硫酸ガスの排出量の減少に成功し、煙害による被害をなくしていきました。

現代においても、周辺環境に影響を及ぼさないようにさまざまな工夫が凝らされています。大気汚染についても研究が進み、大気汚染の原因となっている主な汚染物質も判明しています。硫黄酸化物や窒素酸化物など、汚染物質それぞれに対して対策がとられています。予防対策として、そもそも簡易焼却炉を使わない(作らない)、原材料を検討する、エネルギーの無駄遣いをやめるなどといったことが行われています。また、排出ガスを外に出す前に、汚染物質を取り除く方法についても研究・開発され、今もなお発展しています。
建築技術や科学技術が進化することにより、煙突の性能もまた、進化し続けているのです。

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