煙突工事は、周辺環境に配慮しながら行われます。設備から出てくる煙についても、周辺環境に悪影響を出さないように工夫が凝らされています。
いくつか、具体的な施設の例を挙げて、煙を無害なものにする工夫をご紹介します。

まず、清掃工場の煙突から出てくる煙といえば、どんな色を想像するでしょうか。白い煙が出てくるところを想像する方もいらっしゃるでしょう。
この白い煙ですが、煙の成分は二酸化炭素だと誤解されることもあるようです。
地球温暖化に配慮して、煙が周辺環境に対して無害であるように、煙突工事は行われます。もちろん、二酸化炭素が排出されないように工夫が行われています。
結論からいいますと、白い煙の正体は水蒸気です。燃焼排気ガスの中の水蒸気が凝縮することで、白い煙のようになって外に出ていきます。
ときどき、白い煙のない設備を見かけることがあるかもしれません。
じつは、白い煙を見ると二酸化炭素を排出しているイメージを持たれやすいため(誤解されやすいため)、白煙を出さないように努めている設備もあるのです。
白煙を出さないようにする工夫としては、排ガスの浄化も兼ねて、排気ガスに水をスプレーします。水で排気温度を下げて水蒸気分圧を下げ、そのあとでもう一度温度を上げます。このようにすることで、水蒸気が白煙のようになって出て行くことを防ぎます。
しかしながら、白い煙が出ないように冷却後再加熱方式をとっていると、余分にエネルギーが必要になります。白い煙が出るにしろ、出ないにしろ、排出するものは同じものなので、白い煙に対してネガティブなイメージを持つ必要はないでしょう。白い煙をそのまま出したほうが、エネルギーの節約になります。
周辺の環境に配慮した場合、白い煙を出すのか、白い煙が出ないように工夫をするのか、どちらのほうが良いのか考えてみる必要があるかもしれません。

次に、薬品などの工場の排煙についてご紹介いたします。
工場の煙というと、先ほどご紹介していた清掃工場についてもそうかもしれませんが、汚染物質が排出されているイメージがあるかもしれません。実際に、汚染物質が問題となった事例はたくさんあるでしょう。
大気汚染の原因となる、主な汚染物質は、硫黄酸化物・窒素酸化物・光化学オキシダント・浮遊粒子状物質などです。
硫黄酸化物については、化石燃料を使用したときに、硫黄が燃焼することで発生します。人体にも、慢性気管支炎などの影響があります。
窒素酸化物については、燃料などを燃焼したときに、空気中や燃料中の窒素が酸素と結びつくことによって発生します。人体には、呼吸の気道や肺に影響を与えます。
光化学オキシダントは、気象をはじめとしてさまざまな影響を受けることによって、光化学スモッグになります。光化学スモッグは人体に対し、目を刺激し、頭痛やめまいを引き起こすことがあります。
浮遊粒子状物質は排気ガスに含まれる微粒子で、人体への影響としては、気道に侵入することによって気管支炎などを引き起こすことがあります。

以上のような大気汚染物質が排出されないようにするために、さまざまな工夫が行われています。
簡易焼却炉を廃止することや、自然エネルギーを利用すること、エネルギーの無駄遣いをやめることなど、大気汚染物質予防のための対策が行われています。
大気汚染物質を出さないための処置方法としては、まず、原料・燃料の見直しが挙げられます。燃料を見直すことで、大気汚染物質の発生を抑制します。選ばれる燃料としては、天然ガスや低硫黄燃料などがあります。
次に、設備を整えることです。排気ガスを排出する前に、汚染物質を取り除くシステムが整備されています。
まず、硫黄酸化物対策として、排煙脱硫装置というものがあります。こちらの装置は、排ガスのなかの硫黄酸化物を石灰と反応させることによって取り除きます。
次に、窒素酸化物対策として、低NOx燃焼法が取り入れられています。燃焼の制御や、バーナーの改善などによって、燃焼そのもので窒素酸化物の発生を抑えます。また、排煙脱硝装置という、アンモニアと触媒の作用を利用して、窒素酸化物を還元して環境に無害な窒素と水に分解する装置もあります。
そして、周辺環境にばいじんが飛散しないように、バグフィルターが用いられます。バグフィルターとは、ろ布を特殊表面加工したもので、これに排ガスを通過させることでばいじんなどの粒子を取り除きます。ほかに、電気式集じんもあります。直流行電圧をかけた電極にばいじんを集めることで、ばいじんが外に出ていくことを防ぎます。
また、煙といえば、悪臭を気にする方もいらっしゃるでしょう。環境対策として、悪臭対策も取り入れられています。
さまざまな脱臭装置・方法があり、その設備の規模やコスト、使用環境などに合わせて選択されます。
以上のように、煙突の煙が周辺環境や人体に悪影響を及ぼさないように、さまざまな工夫が行われています。これからも、周辺環境を大切にするために、さまざまな工夫や装置が考えられていくことでしょう。

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