煙突を長く使っていくためには、定期的な点検調査を欠かすことはできません。
点検調査は、コンクリート製と鋼板製によって点検の仕方が異なります。
コンクリート製の場合、コンクリートの強度やコンクリートアルカリ度を測定します。赤外線センサによる調査や、コア採取、目視調査などを行います。
コンクリートの強度を測るためには、シュミットハンマーテストと呼ばれる測定法を用います。シュミットハンマーとは、測定装置の名称です。シュミットハンマーを使うと、設備を破壊しないで、コンクリートの圧縮強度を推定することが可能です。
コンクリートアルカリ度の測定調査は、アルカリテストと呼ばれます。
鉄筋は、酸性化すると錆びてしまいます。コンクリートはアルカリ性であるため、中和反応を利用して内部の鉄筋が酸性化することを防止します。水や炭酸ガスなどが入ってくることによって、アルカリ性のコンクリートが中性化されると、中性化した部分に接している鉄筋の酸性化を防ぐことができなくなります。
そのため、コンクリートの中性化がどこまで進行しているのかを定期的に測定していく必要があります。測定には、フェノールフタレイン溶液が用いられることもあります。
赤外線センサによる調査では、設備が稼働しているときに熱映像を撮影記録し、表面温度を測ります。
実は、コンクリートに熱が加わることは好ましくありません。コンクリートは110度までは膨張しますが、それ以降温度が上がってしまうと、強度がどんどん落ちていきます。
そのため、煙突工事の際に内部に断熱材を設置しておくのですが、その断熱材に亀裂があるなどの不備があると、断熱効果は充分に発揮されないでしょう。コンクリートの表面が剥離欠損している場合も、表面温度が上昇してしまいます。
以上のような不備は早めに発見し、対処することが大切です。
赤外線センサ調査は、可視画像と赤外線画像の両方ともを現地で撮影します。そして、画像処理のあとにカラー画像で表示するため、温度分布をはっきりと確認することができます。
また、可視画像からコンクリートの亀裂や空洞部といった剥離欠損部分を抽出します。そして、亀裂の長さや空洞部の面積を計算します。
剥離欠損部分の状態を正確に知ることによって、修繕のためにどの程度の煙突工事が必要なのかということもわかります。
コア採取とは、コンクリートの一部を採取して、コンクリートの状態を把握するものです。圧縮強度や中性化がどの程度進んでいるのかを、公共試験上にて試験します。コア採取を行った部分については、きちんと補修します。
煙突の内部と外部において、目視点検を行います。
内部調査ではゴンドラを設置し、先に洗浄を行ってから目視調査に入ります。内部煉瓦の場合は、地震や排ガスの影響などさまざまな要因によって損傷しやすいものです。頂部付近や煙道付近などでも脱落や崩壊が見られることがあります。定期的に調査を行い、早めに修繕していくことが大切です。
外部調査では、亀裂や剥離などがないかどうか調査を行います。表面をハンマーで叩いていき、音によって剥離しているかどうかを見極めます。軽い音が鳴ったら、表面剥離をしているという合図です。
外部に亀裂があった場合、亀裂幅が大きくなっていくとコンクリートの剥落事故が発生する可能性があります。早めに設備周囲への立ち入り禁止を行ったり、補修したりしなくてはなりません。
また、空洞化していた場合は、少しの衝撃でコンクリートが落下してしまうため、大変危険な状態です。
外からパッと見たところでは、なんの問題もないと感じられるかもしれません。しかし、細かい調査を行っていくことで、さまざまなトラブルがわかります。トラブルを放置しておくと、大きな事故に繋がりかねません。
鋼板製の場合は、超音波板厚測定や目視調査などといった方法があります。
鋼板製は、腐食すると板厚が減少していき、放っておくと穴があくこともあります。超音波板厚測定器を用いると、現時点での板厚を測定することができます。すると、設計時点よりもどのくらい板厚が減少しているのかが判明します。
コンクリート製においても、鋼板製においても、ただ外から見るだけではわからないことがたくさんあります。
人間の体も、体内の病気はなかなか気づきにくいものです。とくに問題がないような場合でも、健康診断に行ってみたら病気が見つかったということもあるでしょう。健康診断に行かなければ悪化するまでわからなかったかもしれません。早めに病気が発見されることで、早期治療・回復が見込めます。
煙突も同じく、定期的な精密検査がとても大切です。定期的に点検調査を行うことで、早めに問題点を発見し、早期に対処することによって大きな事故を防ぎます。
「大丈夫だろう」という憶測で設備を使うのではなく、点検を受けて「大丈夫だ」と確信してから設備を使うことが大切です。安全管理を徹底するためにも、定期的な点検調査は必要なのです。

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