新設の煙突工事が行われるまでには多くの工程があります。
まずは、しっかりとした設計を行う必要があります。設計のときに必要なことは、煙の上昇能力(通気力)の計算です。その事業における排気ガス量や、排気経路の流れ抵抗などを計算し、煙突の高さや内径を決定します。
同種の事業であっても、規模や設備などで通気力は異なるでしょう。それぞれに合った設計を行わなくてはなりません。また、排気ガスの温度や成分、含水量などといった情報も、設計するために考慮しなければならない情報です。
工事を行う現場周辺の様子はどうかということも確認する必要があります。周辺地域に安全面における影響が出ないように設計しなくてはなりません。また、周辺地域から浮いてしまうような設備を建てるのも好ましくないでしょう。デザインを考える上でも、周辺地域の様子は知っておいたほうが良いです。
さまざまな状態を考慮し、コンクリート製にするか鋼板製にするかを決定します。そして、製作図を作成し、それぞれの工事で使用される材料を決定します。
この間に、施工主と事業主は何度も打ち合わせを行っていくことになります。しっかりと話し合いを行い、お互いに納得して工事を進めていくことが大切です。
ちなみに、火力発電所の新設工事など、建設業許可を得なくてはならない場合があります。法律やその地域の条例などをきちんと確認し、それに則った工事を行わなくてはなりません。設計においても、法令違反がないように注意が必要です。
また、設計するときに耐震性能や耐風性能など、しっかり考えておかなくてはなりません。自然災害が発生したときに壊れてしまっては大変です。万が一の事態に備えて、できる限り安全性の高いものを作る必要があります。

その事業に合った煙突の設計が完成したら、材料を手配し、型に合わせて切り出していくことになります。そして、製作図をもとにして、組み立てていきます。
コンクリート製と鋼板製では、扱う材料が異なるため、作業も異なります。
コンクリート製の煙突工事を行うときには、ジャンプフォーム工法が取られます。
ジャンプフォーム工法は、足場を作りながらコンクリートの打設を行っていく方法です。一段目の鉄筋を組み立てたあと、最下段の型枠を解体します。そして一段目の型枠を組み立てます。下方にある足場を上方に移動させ、上に登ったら、二段目の鉄筋を組み立てます。そして再び最下段の型枠を解体し、二段目の型枠を組み立てます。再び足場を上方に移動させ、コンクリートの打設を行います。
外部にはブラケット足場と吊り足場を用います。
ブラケット足場を見たことがある人は多いはずです。施工中のマンションの周りや、高いところにある修理中の看板の周りなどによく設置されています。銀色の格子のなかに、マンションや看板が収まっているように見えるかもしれません。
ブラケット足場は非常に丈夫であり、台風や地震が起こってもバラバラに崩壊することはありません。工事を行う上で大切なことは安全面ですが、ブラケット足場ならば安心して作業を行うことができます。
また、作業現場の状態に合うように、フレキシブルに足場を構築することができます。
吊り足場とは、名称のとおり、チェーンなどで足場を吊ったものです。地上から足場を組むことができないような、高所での作業を行うときに必要とされます。
鋼板製の場合は、各ユニットや支持鋼材を製作したあと、現場で組立を行います。必要に応じてボルトで接合していきます。
排ガス温度が高く、ガスを放出する径が小さくて熱がこもりやすい場合は、内部にライニング材を施工します。
ライニング材とは、保護層を形成するための材料のことです。コンクリート製では、ライニング材として煉瓦が用いられることがあります。鋼板製では、直径が小さくても対応できるキャスタブル(不定形耐火物)をライニング材として用います。キャスタブルにも、軽量を特徴としたものや高耐火を特徴としたものなど、さまざまな種類があります。
安全に設備を利用するために、ライニング材の選定も大切な作業です。

煙突工事を終えて無事に設置が完了したら、そのあとは定期的な点検調査を受けていく必要があります。
どの材料も、最初は優れていたとしても、時間が経過するとどうしても劣化していくものです。ところどころ不備が生じてもおかしくはありません。また、不備がいつ生じるかはわかりません。
たとえば、地震などの自然災害が起こったあとなど、亀裂が生じることがあります。また、外見からは判断できないような損傷が起こっていることもあるでしょう。
定期的に点検調査を行うことで、不備を早く発見することができます。そして、補修工事や改修工事などを迅速に行うことができるでしょう。
煙突を安全に使用していくために、設置したあともきちんとメンテナンスを行っていくことが大切です。安全性が確保されることによって、地域の人々もまた、安心してその事業を受け入れることができるのです。

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